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遠未来SFの極地「都市と星」十数億年後の地球と人類の姿とは [SF小説]

タイトル:都市と星(ハヤカワ文庫SF)
原題:THE CITY AND THE STARS(1956年)
アーサー・C・クラーク(Sir Arthur Charles Clarke)

あらすじ


十数億年後の地球。砂漠に覆われた世界に、地球唯一の都市ダイアスパーが残された。ダイアスパーは人類の叡智を集めて建設された、驚異に満ちた都市である。人々は、ほぼ自動化されなんら不自由のない完璧な都市ダイアスパーでの豊かな暮らしを享受していた。しかし人々が唯一恐れること、それは都市の外に出ていくことだった。長く安定した環境を維持するために、人々には一種の強迫観念が植えつけられていたのだ。

不思議なことに、ダイアスパーに住む青年アルヴィンには外の世界への恐怖はなかった。それどころか強い憧れと好奇心を持っていた。アルヴィンは外の世界への出口を探すため、ダイアスパーの謎に踏み込んでいく。

なぜダイアスパーは作られたのか。そして、かつては宇宙を自由に飛び回っていた人類にいったいなにが起こったのか。

評価


★★★★★

感想


記念すべき第一回目は、昨年九十歳で大往生を遂げたSF界の巨匠アーサー・C・クラークだ。誰の作品にしようか迷ったけれど、やっぱこの人しかいないだろうってことで。
そんなクラークの作品の中でも一番好きなのが、今回紹介する『都市と星』だ。

十数億年後の地球と人類、そしてほとんど魔法の域にまで達した科学技術に支えられている都市。この設定だけでがつんとやられた。都市の描写だけでおなかいっぱい。
亜光速の宇宙船で移動した結果、時間の流れが異なる地球でとんでもない月日が過ぎ去った、という話ならあるかもしれないけど、地球上に生活する人々の時間の流れの中で、これほど遠い未来の話を描いた小説はほかにはないのではないだろうか(自分が知らないだけであるかもしれないけど)。
科学技術が進んだ未来、それもなるたけ遠い未来の話こそがSFの醍醐味だと思っている自分にとっては最高の物語だ。

ちなみにクラークの中でも比較的有名なこの作品は、残念ながら現在絶版になっている。
『都市と星』はもともと『銀河帝国の崩壊』という同じくクラークの書いた作品があって、それを全面的に改稿したものである。基本的に同じ話をもう一度書き直すということは、それだけこの物語に思い入れがあったということだろう。

この二つの作品の出版からしばらく経って、グレゴリイ・ベンフォードがクラークの『銀河帝国の崩壊』を第一部とした続編『悠久の銀河帝国』を発表した。こちらは現在入手可能。基本的に同じ話ならば、『銀河帝国の崩壊』とセットになった『悠久の銀河帝国』のほうにしておこう、という出版社の意図があるのかどうかはわからない。


2010.4.14追記
前に本屋に行ったら『都市と星』の新訳版が出ていた。要望が多かったのかもしれない。

改めてこの小説について考えてみたときにひとつの疑問が。
ダイアスパーでは科学の粋を集めた都市の機能によって社会に大きな変化がなく安定状態にあり、そのため十億年もの長い間存在してこれたわけだが、リスではどうやって同じだけの期間、文明を存続させることができたのか。百年や千年ではなく十億年も切り離されてきた二つの都市の住民が、会話がかみ合うほどに似た価値観を持ち、身体構造も細部に多少のちがいがあるにせよ、基本的にほとんど同じというのも信じがたい。

まあ読み直したわけではないので、もしかしたらその辺のことが書かれているのかもしれないけど。いや、やっぱ書かれていなかったような気が。

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