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SF小説初心者にオススメの「時間封鎖」地球の一年が宇宙の一億年に! [SF小説]

タイトル:時間封鎖(創元SF文庫・2008年)
原題:SPIN(2005年)
ロバート・チャールズ・ウィルスン(Robert Charles Wilson)

あらすじ


タイラーと双子の天才兄妹ジェイスン、ダイアンは近所に住む幼馴染だ。ある日、三人で夜空を眺めているとそこから突然星が消えた。地球は、のちに仮定体と名づけられるなに者かによって、まわりを膜で覆われ封鎖されたのだ。しかも地球で一年過ごすうちに、膜の外の宇宙では一億年もの歳月が過ぎていた。ということは、四、五十年後には太陽が赤色巨星となり地球を飲み込み人類は滅亡することになる。太陽はいつもと同じように地球を照らしていたが、もし地球の内と外でそれだけの時間差があるならば、地球はあっというまに焼き尽くされるはずである。しかし実際にはそうはならなかった。太陽は黒点もプロミネンスもないまがいものだったのだ。

人類は事態を打開するために、この時間差を利用して火星の植民地化を思いつく。火星をテラフォーミングして人類を送り込めば、地球で過ごすほんの少しの間に火星では何万年ものときが過ぎ、そこで発展した文明が地球の状況を打破するかもしれないという可能性に期待したのだ。
火星植民地化は成功するのか。そしてこの大がかりな“封鎖”をした仮定体の目的とはいったいなにか。
ヒューゴー賞受賞作品。

評価


★★★★☆

感想


すっと物語に入っていける読みやすさがあって、上下巻に分かれた長い物語ではあるものの、その長さをあまり感じさせない。
主人公と双子の兄妹の人間関係にかなり重点が置かれているのがその理由のひとつだと思う。また現在と過去の回想が交互に配置されていて、読み手を飽きさせない構成になっている。

この物語において読者が一番興味をひかれる点は、なんといっても地球で一年過ごすうちに、地球の外では一億年が過ぎ去っているという設定にある。
一億年! なんという長さ。こういった途方もなさすぎて笑えさえするような設定こそ、ある意味SFの真骨頂だ。

個人的には、著者は火星をテラフォーミング(惑星地球化)するにはどうすればいいか、というところからこの物語の着想を得たのではないかと勝手に推測している。あまりに長い時間が必要なテラフォーミングを、物語の中のキャラクターたちと同時代に完了させるにはどうすればいいか。それには地球の時間を遅らせればいいじゃん! と思ったに違いない(あくまで勝手な推測)。
なんでこんなことを思ったかというと、火星植民地化のくだりがやけに生き生きと描写されているように感じたからだ。

唯一不満点は、これだけの長編にもかかわらず、最後のあたりが駆け足気味に感じたことだ。もう少し細かく書いてもいいんじゃないかなと思っていたら、どうやらこの作品は三部作らしく、第二部無限記憶(原題:Axis)、第三部Vortex(たぶんまだ出てない)へと続くらしい。
時間封鎖はおもしろかったけれど、続編を読む気があまりしないのはなぜだろう。きっとパワーダウンしていくシリーズものがよくあるからかも(笑

そんなにSFが前面に出ている感じの内容でもないので、SF小説に抵抗がある人にもおすすめできる本です。


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